「中国」に肩入れする人々の不思議2016年07月12日 23:48

中国が管轄権を主張する南シナ海のほぼ全域について、国際仲裁裁判所は「歴史的な権利を主張する法的な根拠はない」と全面的に否定した。国際法に基づけば極めて真っ当な結論であり、議論の余地さえない話だ。

南シナ海において中国が勝手に設定した「九段線※」と呼ばれる境界線については僕もいくつかの著書の中で疑問を述べ続けてきたのだが、どういうわけかそれに対して否定的な意見を伝えてくる日本人が何人かいて、驚いた。なぜまともな選挙すら行っていない独裁政権の言い分をそのまま受け入れてしまうのか不思議だったからだ。しかし、いろいろ考えていくうちに、ひとつわかったことがある。

※九段線
http://globalnation.inquirer.net/files/2012/04/disputed-south-china-sea-ma.jpg

ヒトラー率いるナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)は後世の歴史観からいえばただの愚かな集団だったのだが、成長期においては意外なほど支持者が多かった。有名なところではアメリカのヘンリー・フォードは熱狂的で、多額な支援金すらわたしている。それどころか、ドイツがフランスに攻め入るまでは有力国の多くの政治家や経済人がヒトラーに理解を示していたのである。

その理由は実ははっきりしていて、独裁政権は決断が早く、わかりやすいからだ。そして停滞した世界情勢に風穴を開けてくれる可能性があるので鈍重な民主主義より魅力的に映る。つまり、「せっかち」なインテリがはまりやすい要素に満ちあふれているのである。

しかし独裁政権がやることは、あとから考えればだいたいまちがっている。これは歴史的な事実なので、中国の習政権も、今、かなりヤバイ橋を渡っていることを知らなければならない。

中国に肩入れする人は、もう少し冷静に考えてみてほしい。「南シナ海は2000年以上前から中国人が活動していたので中国の領土だ」という言い分が通るなら、日本人だってかなり広い海域に昔から進出していたのだから(南シナ海はもちろんオーストラリア近くまで行っていた人がいる)、太平洋の半分くらいは自国の経済圏だといっていいことになる。そうなるともう大変で、周辺国はすべて「歴史的な事実」を提示してさまざまな権利を主張し、さらにはキャプテン・クックの母国であるイギリスあたりも黙ってはいられず、あとはもう戦争で解決するしかない!

そういう最悪な事態を避けるために国際法が存在するのに、それを無視しようとする中国はどこに向かうのか? そしてそんな中国を一途に支持する人々はどういうユートピアを描いているのか? いろいろと興味の尽きないニュースである。


追記
「昔、俺の祖先がそのあたりにいたから今でも領有権がある」という主張を広げるなら、アメリカ大陸の先住民たちの先祖の一部は中国にまだ国家がない1万年近く前に「そのあたり」にいた可能性が高い。したがって「中国の広範囲にアメリカの管轄権が及ぶ」という考え方も成り立つんだよなあ。どうする?

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