タイ、バンコク旅行情報メモ3:辛くてパクチーな「タイごはん」の今2019年06月22日 02:53

グリーンカレー(見た目も辛みは感じられずパクチーもないよ)
日本人がタイ料理に抱くイメージは「とにかく辛い&パクチーの香り」に尽きると思います。

僕が初めてバンコクに行ったのは30年ほど前ですが、そのときはたしかにそうでした。観光客相手の気軽なカフェレストランで食べた「あまり辛くないです」と説明書きされたカレーですら激辛だったし、現地の人しか行かないような食堂で出てきた炒めものは全体の5分の1くらいが「緑色の超辛いヤツ」プリッキーヌ(タイ特産の唐辛子)。二口が限界で、「この国では唐辛子はスパイスではなく具なのか!」と驚いたものです。また、パクチーも隠し味程度ではなく、料理の上にバサバサとかかってましたね。個人的には辛いものもパクチーも嫌いではなかったのでいろいろ挑戦しましたが、それでも「タイ料理は手強い」と思ったのはたしかです。

ちなみに、これは僕だけの意見ではなく、そのころタイを旅した人と話をすると、だいたい似たような感想でした。そして、そんな個性的なところが魅力だったのです。タイ料理は、ただ辛いだけでなく、味付けなど「調理の組み立て」がしっかりしており、その点が認められると、アメリカでもヨーロッパでもタイ・レストランが増えていきました(ニューヨークで行きましたが、味はかなり本格的でした)。

その後、何度かタイを訪れたときにも辛くて香りの立つタイ料理は僕を楽しませてくれました。庶民的な店からけっこう高級なレストランまで、かなりの種類のメニューを口にしてきたはずです。

ところが、今年(2019年)1月、久しぶりにバンコクに滞在したとき、なんか変な気分だったのです。旅行中は気づかなかったのですが、帰国後にこう思いました。

「あれ、全然、辛いもの食べてない」

旅行中に口にしたものはほとんどがタイ料理です。大好きなグリーンカレーは有名店をハシゴしているし、その他、代表的なメニューはだいたい食べていました。なのに、どれも辛かった印象がないし、パクチーも隠し味程度にしか使ってなかったのです。

それからは意識して辛そうなものを探したのですが、正直言って「激辛」はなく、せいぜい「中辛」か、多くは「ちょい辛」程度。どうしたんだタイ料理!

もちろん、僕だけの狭い経験で決めつけることはできないのですが、ただ、タイで食べるものが昔ほど辛くなくなっているのは事実だと思います。少なくともフードコートレベルの店では、辛さを感じない料理がほとんどです。これには2つの理由があると思います。

1、社会の高度化・都会化などが進むにつれて料理がマイルドになってきている。
2、同時に食の多様化が進み、伝統的な辛い料理の存在感が薄まっている。

1は、本来、辛いメニューであるタイカレーですら甘口になってきていることでわかります。また、今のバンコクでは欧風料理や和食(主に日本のレストランチェーン)、他のアジアの料理(ベトナムやシンガポールの料理が多い)が普通に食べられているので、タイ料理の味付けもグローバルな方向に引っ張られているのではないでしょうか。

そういえば「世界一おいしい料理」に選ばれたとして(実は誤報&誤解です)人気が急浮上しているマッサマンカレーは、もともとあまり辛くないので、この流行もタイ料理のマイルド化に拍車をかけているのかもしれません。

先日、タイの東北地方(イサーン)と共通した料理体系をもつラオスのビエンチャンに行ったところ、急激な社会の変化も都会化も進んでいないこの国では多くの料理がちゃんと辛く、なんだかうれしくなってしまいました。となると、タイでも地方に行けば、まだまだ伝統的な料理が食べられそうで、新たな旅の目標ができた気分です。

……と、ここまで書いて、検証のため北タイで最大の都市チェンマイに行ってきました。その結果は、やばり同じでしたね。確実に辛いものは少なくなっている。以下、バンコクでの経験も含めて料理ごとに報告します。

●タイカレー
これは本当に辛くなくなりました。地元の人が多い店でも辛い料理であることを忘れるほど。旅行者相手のところでは「スパイシー?」「イエス、ベリースパイシー!」と注文したとしても、結果は「ちょい辛」です(笑)。

●炒麺系
主にパッタイですね。これは生唐辛子を具材に入れることがあるので、それを口にすれば辛いです。しかし、味付けはかなりマイルドになっているケースが多いですね。そのせいで、全体的なバランスが崩れているように思います。

●汁麺系
もともと辛くはせず、食べる人が自分の好みで調味料を足すシステムなので、適度に辛くすることができます。そういう意味では味は変わっていないのですが、地元の人が食べるところを観察していると、昔のようにアレンジする人は少なく、ほぼ辛みなしの人も大勢いました。どうしたんだ?

●おかず類
タイ料理のルールが完全にわかっているわけではないので、もしかするともっと辛いメニューがあるのかもしれませんが、町中の小さいレストランやフードコートで食べる限り、辛くて完食できなかったものはまったくありませんでした。パクチーも遠くに感じる程度。タイ国内で食べるおかず類の大半は、日本を含めたアジア人にとって「普通においしく食べられる料理」です。

追記
パクチーについては、あるテレビ番組の「パクチー嫌いのタイ人はどうやって暮らしているのか?」という内容のレポートで、こんなふうに報告されていました。

「タイ料理でパクチーを使うのは一部なのでそんなに問題はない」

実際、町中の飲食店で生パクチーを具材として大量にかけているケースほとんどなく、基本的にはハーブのひとつとして香り付けに使う程度です。それなのに未だに日本で誤解が多いのは、「パクチー好き=グローバルな人材」と思われているせいでしょうか。もちろん、そんなことはなく、パクチーを口いっぱいにほおばるような人は世界的には稀少人種です(タイでも見たことがありません)。