追悼、渡瀬恒彦さん、「神様のくれた赤ん坊」も忘れないで2017年03月19日 22:35

昨年末からずっと忙しく、このブログもほったらかしてました。すいません。

3月14日、俳優の渡瀬恒彦さんが亡くなった。評価の高い役者だっただけにニュースで大きくとりあげられたほか、追悼番組なども放送されているようだが、そこで「代表的な作品」として紹介される映画のなかにけっこう大切な1本が入っていなかったので、補足しておきたい。

「神様のくれた赤ん坊」は喜劇を得意とする前田陽一監督の1979年の作品だ。当時、人気急上昇中だった桃井かおりさんが主役だったうえ、この映画と「もう頬づえはつかない」の演技が評価されて第3回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞してしまったことから、渡瀬さんの存在はなんとなく忘れられたようになっている(ウィキペディアの「渡瀬恒彦」の項目でもなぜかリストアップされていない)。しかし、公開当時、桃井さん目当てで観に行った僕は、むしろ渡瀬さんの演技に魅了されてしまった。以降、彼の代表作のひとつだと思い続けている。

この作品で渡瀬さんが演じているのは、ちょっと軽い、遊び人風の男である。といってもけっしてチンピラではなく、なんていうか、要するによくいる「普通の若者」なのだ。それまでヤクザや犯罪者といった特殊な人物の役でしか観たことがなかっただけに、映画が始まってしばらくは、ものすごく違和感があったのを覚えている。

ところが、ストーリーが進むうちに、そんなありふれた男の中にある「強さ」が徐々に発揮され、それが進行上の鍵になっていく。そのせいか後半はどんどん感情移入していき、僕はすっかり渡瀬さんのファンになってしまった。そのころ、絶好調だった桃井かおりを完全に喰ってしまっていたのだから、本当に実力のある役者だったのだろう。

4年前、NHKのBSで放映しているのをみつけて久しぶりに観たのだが、25年経ったあとも渡瀬さんの演技は光っていて、なんか、ほっとしてしまった。最近、あまり話題にならない映画ではあるものの、渡瀬さんの魅力を知るうえではけっこう重要な作品だと思うので、気になる人はぜひご覧ください。

旅行会社は危うい商売、「てるみくらぶ」の破産騒動に関して2017年03月31日 02:18

旅行代理店「てるみくらぶ」の破産によって多くの人が迷惑を受けた。2年ほど前から経営的にはかなりやばい状況だったにもかかわらず、新規受付&入金を繰り返すことでなんとかやりくりしていたようだが、いつか破綻するのはわかっていたのだから、もう少し慎重に会社運営を続けるべきだったと思う。この点、完全に被害者に同情しているものの、一方で、世間一般の観光業界への認識の甘さにはあきれてしまったので、そのことを書きたい。

旅行会社は机と通信設備さえあれば業務ができる。お手軽に創業できる分、だめになるときも早い。これは、10年くらい前の旅行雑誌を探し出してきて、そこに紹介されている旅行代理店のうちの何社が残っているか調べればわかるはずだ。僕個人の経験でいえば、大学時代から40年近くのあいだに20社以上の旅行会社とつきあってきたが、今でも残っているの数社に過ぎない。8割以上は消えているはずで(倒産以外に買収・合併なども含む)、旅行業界とはそういうシビアな世界なのである。

つまり、旅行会社は他の業界より廃業のリスクが高く、いつ潰れてもおかしくはないのだから、そういう前提でつきあうべきだ。「そんなの、危なくて取り引きができないじゃないか!」と憤る気持ちはわかるが、実はリスクの判断はそう難しくない。要するに「他社より安い価格設定」は注意というわかりやすい構造になっている。

旅行商品を構成する足代や宿代は条件によって大きく上下するものの、情報はオープンなので、相場を利用して自分だけ儲けるのは難しい。今はネットで誰でも検索できるから、差別化するのは大変だ。それだけに、サービスで勝てない会社は身銭を切って安売りするしかなく、必然的に経営状況は悪化していく。

そんな綱渡りを続ける旅行会社でも数年は持ちこたえられるから、その間に商品を買った人は、大変、お買い得に旅することができるのだが、ただしそれはラッキーでしかないことを知るべきだろう。このような会社は、早晩、潰れるので、そのタイミングで申し込んでいた人は損をする。わかりやすくいえば「格安旅行会社を利用するのはロシアンルーレットをしているようなもの」なのだから、それなりの覚悟が必要だ。

明らかに相場より低い価格で販売している旅行会社は(「てるみくらぶ」は1~3割安いといわれた)、どう考えても無理してるわけで、それを「リスク込み」と受けとらなかったとしたら、資本主義社会への理解が低いとしかいいようがない。

安い旅行会社はいつか潰れる。だからこそ上手に利用すれば儲かるし、タイミングをミスった人は損をする。その事実は今後も変わらないと思う(もし全員に全額を保証したら旅行代金は値上がりしてしまい、結局、みんなが損をする)。